「びびり振動」の研究と技術開発

　機械加工では、機械－アタッチメント－工具－工作物系で構成されるバランス のとれたシステム、いわゆる「加工の場（加工空間）」を構築すべきであり、 その必然性は古くから知られている。ところが、技術の高度化が進むにつれて、 加工の場を構成する各要素が独自に専門深化して進歩していく傾向も強くなり、 その結果、系を構成する一つの要素のみが進歩して他の要素とのバランスが崩 れ、好適な「加工の場」を維持できないという弊害もみられるようにもなって いる。
　2020 年代の現今では、このバランスの崩れが特に系のハードウェア面に関 わる「びびり振動」及び「熱変形」、又、ソフトウェア面に関わる「工程設計」 で顕著になっていて、本質的な側面から取り組むべき研究や技術開発課題の 見直しが迫られている。
　本書は、「びびり振動」、特に理論と実用技術の両面で最も進んでいる 「再生形自励びびり振動」を対象に、若手の研究者や技術者が率先して取り組むべき新規性に富んだ課題を探り、 国際的にも最先端を行く研究や技術開発を策定する際に手助けとなる情報を判りやすい形で提供している。
　具体的には、主軸の高速化とともに、浮かび上がってきた新たな「安定線図」の作成方法や適用限界、更なる 解決すべき問題点などについて詳しく論じている。もちろん、1960 年代から問題であるとされてきた、例えば「実 験におけるびびり振動の開始点の判定」のような未解決な研究及び技術開発課題にも触れている。

伊東 誼 著
公益財団法人 工作機械技術振興財団　2023 年 7 月12日 発行
発売元　株式会社スマッシュ
A5 判 116 頁 オールカラー
定価本体 1,200 円+税

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